2015年1月5日月曜日

SNSは私の生活に悪影響を及ぼすか?

【はじめに】
 TwitterやFacebookなどのSocial Net Service(SNS)は世界で多くのユーザーを抱えている.これらを利用する大きな目的は,Net上で他者と交流すると共に多くの情報を共有することでユーザー自身に大きな利益をもたらすことにある.一方で,SNSには短所も多くあると言われている.SNSを気にするがあまり,家族や友人との大切な時間中にも,頻繁にスマートフォンでSNSをチェックしてしまうことが問題にあげられている1,2).Tomori 3)は数年前よりSNSを利用する媒体iPhoneに依存する自身を振り返り,「俺もガラケーに戻そうかな」と発言しているが,いまだ実現には至っていない.これらSNS中毒ともいえる症状について,多くのユーザーが危惧することがあり,この症状はネット業界のみならず,多くのメディアで取り上げられている.しかし,SNSは簡便かつ有用なツールであり,なかなか断つことができない実状がある.その上,本当にSNSが生活に悪影響を及ぼすかどうかの明らかな根拠は不明のままであり,そもそもSNSを辞める必要があるかについても疑問視される.
 筆者はガラケー(ガラパゴス携帯)であるが,SNSを毎日数回チェックしている.また,Facebookに掲載するために家族の団欒中に食事の写真を撮影するなどの行為を経験している.さらに,掲載の文面やコメントの掲載などに時間を割いている.これらの経験から,SNSが少なからず自身や家族の生活に悪影響を及ぼしている可能性があるのでは?と仮説を立てた.したがって,本研究ではSNSの無い生活が自身の生活に良い影響を与えるか否かについて主観的に検証することを目的とした.

【方法】
 筆者は2014年12月29日~2015年1月6日まで,SNS(Twitter,Facebook)へのアクセスを一切無くした.介入中はインターネットへのアクセスおよびメールのチェックは可とした.介入前後で家族(妻,娘)より家族サービスの質が変わったかどうか5段階で聞き取り評価をした.息子に関してはMini Mental State Examination が5点未満のため,評価者から除外した.また,介入中の自身の変化や気づきについても記録した.

【結果】
 筆者の評価では介入前の家族サービスの質は3であり,介入中のサービスの質は4であった.妻の評価では介入前のサービスの質は2(平日)であり,介入後(休日)の質は5であったが,休日による変化であり,SNSアクセスの有無で特に変わったことはないとのことであった.娘の評価では介入前のサービスの質は1(平日)であり,介入後(休日)の質は5であった.介入中の自覚症状としては,はじめの数日はSNSの動向が気になったが,数日後からは全く気にならなくなり,一種の義務的なものからの開放感が若干芽生えた.SNSにアクセスしないことで明らかに時間が増えたという感覚はあまりなかった.一方で,4日後ほど経過してから,Facebookから未読に関する催促のメールが数件入るようになった.介入中の家族サービスは筆者が大晦日より軽度の腰椎ヘルニアに罹患したことからActiveな遊びは困難であったが,Staticな遊びにより娘や息子の要求に応えることが可能となった(写真1).

写真1

【考察】
 本結果から,SNSへのアクセスを断つことは筆者にとって家族サービスの質を主観的にあげることがわかった.しかし,家族の評価において,筆者からの家族サービスの質の向上の要因は,SNSへのアクセスの有無によりも,休日時に共に時を過ごすことであった.確かに,筆者は頻繁にSNSをチェックしているわけではなく,投稿も1日に1〜3件ほどである.ゆえに,筆者が感じた家族サービスの質の向上は自己愛的性質を帯びていることが明らかになった.
 別の観点から考えると,SNSの時間を他の時間に利用できるという感覚は薄かった.これはそもそもSNSにアクセスする時間がさほど多くはなかったということの表れでもあると考える.また,SNSは気軽に情報収集を可能にする.したがって,適度に他者と交流し,情報収集する手段としてSNSは有益であるといえる.
 一方で,SNSの義務的な要素からの解放に関しては若干の有用性がみられた.SNSは社会の縮図も示しており,交流相手を不快にしないように留意する必要がある.ゆえに,返信に関する義務感が生じる4).しかし,筆者はこの義務感に強く悩まされていたわけではなく,介入後に筆者が年末からのSNSをチェックする手間を考えると,適度にSNSにアクセスする方が効果的であると考える.
 これらのことから,SNSにアクセスしないことは筆者の生活にとって有益ではないことが明らかになった.本質である家族サービスの質を上げるためには休日の回数を多くし,家族との交流時間を多く持つ必要性が示唆された.

【本研究の限界】
 本研究では年末年始に行われた.したがって,平日と休日の要素が混同されており,かなりのバイアスが混入している可能性が高い.今後再実験を行う機会があれば(まずないが),条件を同じにして検討する必要があると考える.

【謝辞】
本年も宜しくお願い致します.

【引用】
1)Ranking Share:ツイ廃やfacebook中毒な方必見!SNSを辞めることで得られるメリットランキング.オンライン,入手先<http://www.rankingshare.jp/rank/njpovqzaqt>,(参照日2015-01-06)
2)App Woman:恋人や家族よりも大切!? 4割以上が「SNSなしの生活は1日も耐えられない」!.オンライン,入手先<http://appwoman.jp/archives/77942>,(参照日2015-01-06)
3)Kounosuke Tomori, Tatsunori Sawada: ある飲み会での会話.品川,2014.
4)誠 Biz.ID:もしも「ソーシャル疲れ」を抱いたら? 今すぐできること.オンライン,入手先<http://bizmakoto.jp/bizid/articles/1309/05/news006.html>,(参照日2015-01-06)