2013年12月31日火曜日

良いお年を!

今年もあと数時間になりました。色々ありましたね。本当に。教員を辞めてから、正月はいつも出勤していましたので、年末に振り返るという癖がついていません。年度末に振り返ることは良くあるのですが。ですが、ちょっと振り返ってみます。

・日本臨床作業療法学会を立ち上げました。
本当に僕たちの同世代の、同じ意志を持つ人達で臨床を盛り上げたい。それが形になりました。理事の皆さんは昔、作業療法に悩んだ人達ばかりです。今は、作業療法の可能性に心躍らせているはずでしょう。本当に嬉しく思います。3月の学会では空前の発表数ということもあり、日本の今後が明るく輝いている気がしてなりません。是非皆さんで成功させましょうという気概でいっぱいです。

・職場が大人数になりました。
とうとう当院も100人越えになりました。合宿等、色々職場でチャレンジもしてみました。諸事情もあり、立ち上げた訪問も一段落したので、訪問の責任者をそろそろ降りようと思っています。沢山のスタッフの責任者をどうすれば良いのか?と悩みは絶えませんが、スタッフの頑張りに助けられて、更なるステップアップを確信しています。職場では厳しいですがね、来年も厳しいでしょう(笑)。私自身、同じ職場に5年以上居たことが無いので、来年は未知の年になります。ただより良くなるようにやるだけですね。

・都学会の学会長をさせて頂きました。
初めての学会長でしたが、都士会の皆さんと当院のメンバーに救われて、大成功に終わりました。PDFで講演するという貴重な経験もし(笑)、今後の糧になりました。今年は臨床作業療法学会の会長もさせて頂きますが、1年で2回も学会長やることは、もう二度と無いと思います。というか、学会長やることが恐らく無いと思いますので、本当に貴重な経験をさせて頂いた年だなあと思いました。

・ADOCのメンバーになれたかな
僕はADOCprojectに初めて呼ばれた時は、単に飲み会に行くって感じで行ったし、ADOCの開発メンバーでもなければ、いつも使っている訳でもなく、ちょっとメンバーにさせてもらっているかなっていう感じでした。今年は、本当に事例本や色々な活動を通して、または学会でいつも一緒に居させて頂いて、ようやくADOCのメンバーになれたかなって勝手に思っています。ADOCprojectというくくりにはいますが、みんな目指すところは作業療法の振興ですので、来年はより作業療法に貢献できるように頑張りたいです。

・竹林さんと仲良くなりました
今年は竹林さんと懇意にさせて頂くことが多かったです。学ぶことが多く、本当にお世話になりました。彼の臨床技術は機能回復ですが、作業とcombineされており、非常に感銘を受けました。実際に臨床を通してみさせて頂き、世の中には凄い人がいるものだなあと思いました。これからも親交が深まるとは思いますが、僕は彼には絶対なれないので、彼のおいしいエキスを頂き(笑)、私なりに自分の作業療法技術をブラッシュアップしたいなあと思います。

・実践研究会をおろそかにしていました
こりゃ反省です。実践研究会を東京で一度も開かなかったのは、はっきり言って怠慢です(苦笑)。来年は静岡にも顔を出しますし、5月に東京でも開催します。勢力的に動きたいですね。

そして、多くの方々にお会いし、議論し、楽しい時間を過ごさせて頂きました。本当にありがとうございました。来年もよろしくお願い致します。

尚、年末は息子の入院、頑張った英文のreject、そして、大晦日の今朝から腰痛激痛という不運に見舞われたので、年明けは良いことを願います。

尚、ウチはおせちに酢だこを入れます。タコは夏に釣ったタコです!これから栗きんとんを作る任務があります。では皆様よいお年を!


2013年12月28日土曜日

遅ればせサンタ

私達は多くの場合、「やまい」に悩まされた人々に関わり、支援をする。
起こりうるライフイベントに対し、
そこだけ切り抜いたとしても「人」を理解できない。
その背景には人生があり、取り巻く色々な事情がある。





今日は12月28日世間は帰省ラッシュや年末のニュースに騒がしい。
少し遅れたクリスマスパーティー中の男の子は楽しくてしょうがない。
一枚の写真からは表面的なものしか捉えられない。
クライエントのその時のライフイベントを捉えても本質は見えない。






突然医師から「危ない状態です」と言われることは親の精神状態を揺さぶり、
入院生活は取り巻く人々のそれまでの作業の習慣を一変させる。
彼らにも多くの文脈が存在する。
医療職でも動揺する。一般の人々は更に動揺するだろう。




両親は不安と病院への往復により家事、仕事など様々な作業遂行障害を生じ、
ひいおばあちゃんは日課の孫と遊ぶ作業ができなくなり、食事も喉を通らない。
お姉ちゃんも両親やじいちゃん、そして弟と遊ぶという作業ができなくなる。

「〇〇くんに会えなくて寂しいよ。」
と大粒の涙を声を上げずに流した娘にぐっと来るものを感じた。

感染対策の病院のルールは重要だが、一方で姉弟の大切な作業を剥奪する。



様々な状況に障害され、面会できる時間は両親のどちらか1時間半のみ。

ずーっとお母さんの背中を追い続け、少しでも離れると泣いてしまう。
好奇心旺盛で、そこら中走り回り、家の前を走るバスが大好き。
食いしん坊で、大人位ぺろっと食べてしまう。

大好きなお母さんにもなかなか会えず
大好きなお散歩もできない
大好きなお姉ちゃんとも会えない
大好きなじいちゃんの上にのって遊べない
お腹がすいてもひいおばあちゃんの部屋でつまみ食いもできない
閉ざされたベッドの上で家を思い出すとつい泣いてしまう




クリスマスにサンタは来なかった。
お姉ちゃんは
「サンタさんはいつくるかな?〇〇くんが帰って来たら来るんだろうね」
ずいぶん気の利いたサンタクロースは今日やって来た。





クライエントの背景には多くの人々が絡んでいる。
1つのライフイベントの背景には1人のみが絡むのではなく
芋づる式に作業遂行障害の連鎖を引き起こす。
理解はしていたが、再確認した出来事でした。


これからも常にクライエントの背景を共に共有し、
一番近くの伴走者を目指したい。


多くの人々に支えられて、幸せな作業を再獲得しました。
心配して頂いた皆様ありがとうございました。

Merry X'mas

2013年12月7日土曜日

学生さんは見ている

えー主任に忘れ物を届けてもらうため、駅に行くまで時間つぶしに裏道で停車して待っていたら、おまわりさん2名に職質されました(笑)。「警察24時大好きなんですよ」と訳の分からん会話をしましたが、捕まらずにすみました。

その数時間前に大学で3年生に授業をさせて頂きました。あっ私、一応元教員をしていました。臨床に戻って5年になりますが、5年前から招いて頂いています。本当にありがとうございます。年に1回ですが、唯一の教鞭で非常に楽しくやらせて頂いています。

今回は、はじめに学生さんに質問をさせて頂きました。

「身体障害(あるいは老年期)の実習で、作業療法士は何をしていましたか?」

ROMex、歩行練習、ワイピング、ペグ、モビライゼーション、マッサージ、輪入れ。。。
と多くの学生さんの答えがそうでした。たまにADL、料理とか。


本当に学生さんはよく見ているんだなあと思いました。今の臨床はそういうことなんだろうな。それが悪い訳じゃないんだけど、上だけ見たらOTなのか何なのかわからなくなっちゃう。実習を通して、その印象が強かったということなんでしょう。

私のこの授業での使命は、学生さんに作業療法の臨床と楽しさを伝えることですので、精一杯やらせて頂きました。1コマ目から4コマ目までぶっ続けで授業をした上での5コマ目なのに誰も寝ずに聞いてくれてありがとうございました。

学生さんの感想には本当に嬉しい意見が沢山会ったのですが一部抜粋すると

「体験談を聞き、感動しました。OTを専攻してよかったです」
「本当の作業の素晴らしさを感じました」
「実習で作業療法は何だろうと思いましたが、授業を聴いて作業療法は面白いなと思いました」
「講義で学んだことと実習で学んだことがうまくリンクせず、悩むことが多くありましたが、繋がった気がします!」
「作業の意味についてもう一度見直し、クライアントに寄り添うことの大切さを再確認、実感することができた」
「ただその人のやりたい作業を見つけるだけでなく、なぜそれがやりたいのかという背景が大切なんだとわかりました」
「正直、学校を辞めようかと思ったのですが、もう一度作業療法士を目指したいと思いました!頑張ります」



臨床と教育はやはりリンクすべきであり、これからも機会があれば学生さんには作業療法の素晴らしさを伝えていきたいなあと再認識しました。私もクライエントを支援し、作業療法の世界を盛り上げていきたいと思います。先生、学生さん貴重な機会と時間をありがとうございました。

2013年12月5日木曜日

OSとは。。。

先日OSセミナーに行ってきました。会員歴は長いのですが、実は日本のセミナーは初めてです。友人の侍OTさんが待ちに待った会でした。素晴らしい会でした。木田さん(素晴らしい講演内容でした)ともお近づきになれましたし、共有できたことに感謝です。会の内容自体は私とほぼ同じ思いをtomoriさんがブログに書いていますので、それをご参照下さい。ちなみに丸刈りなだけで侍さんと間違えられましたが、私は正反対の人間ですのでご注意を。私はあんなに人徳者じゃありません。


撮影 琉球OTさん 勝手に載せちゃいましたごめんなさい

このセミナーには私の病院からも15名位参加したようです(ようですって。。。いつも会場で会って参加を知るのがほとんどです 苦笑)。当院にはOSを学習するプロジェクトチームもありますが、一連の内容を聞く中で、僕は「ウチのスタッフのどれくらい、この内容をOSとして理解できているんだろう。。。」と不安になりました。

私はOS、つまり作業科学について詳しく理解している訳ではないのですが、今回は当院のスタッフに向けてOSについて書きたいと思います。

私の中では、最近、我が国では「作業科学」と「作業療法」との混在が顕著だと感じています。この2者は異なるものだというのが私の考えです。今回、Helen先生や齋藤さわ子先生の御講演の中でも区別されていました。


OS(Occupational Science)つまり作業科学のはじまりは何なのか?

このことについて私は、専門職として高度な専門学術レベルを確立するために大学院を設立しようとする動きにはじまったと認識しています。南カリフォルニア大学で初めて大学院を設置しようとした際に、大学院で教育するには「作業療法」は学問として成立していないといけない。作業療法は応用科学であるが、その基礎となる学問が存在しないと言われ、大学院設立が頓挫してしまった。従って、作業療法の核となる作業の基礎科学となる学問、「作業科学」が生まれ、念願の大学院が開設され、作業療法に関する上級学位が取得可能になったという経緯と記憶しています。(現在では応用科学でもあると言われていますが、私はこのことが作業療法との区別を困難にしている一因だと思っています)。アメリカの作業療法士の地位の高さにはこのことも影響していると思います。日本では「博士号」を持っていても、教員以外本当に何の役にも立ちませんが、海外では「博士号」があるかないかで、相手の対応がかなり変わるというのも事実です。

すいません。これまでの話では、作業科学が何なのかについては何も説明していません。これからが本題です。私の思う作業科学とは簡単に言えば「作業の性質を知る学問」だと思っています。語弊が無いように言ってしまえば、そこには、Bottom upとかTop downとか、Client-centeredとか、どうでもいいんです。


一番大事なのはOccupation。Occupation-centeredなんです。


人がどうだというより、作業がどうなのか?そこに興味を持つことが根本にあるのだと思います。勿論人と切り離すことはできませんが、作業優位なのだと思います。

一連の作業療法を展開して、良い結果が生まれたということは臨床的には非常に素晴らしい。しかし、それは作業療法の話であって、その臨床の話の中における「作業」がどういう位置づけなのか?それを科学する。それがOSなのではないでしょうか?

その為に、作業科学研究では作業を「意味」「機能」「形態」から捉えたり、世の中の作業的公正について考えたり、人の作業の歴史の意味合いを考えたりしているのではないでしょうか?(Helen先生は量的研究が少ないことをおっしゃっていらっしゃいましたが。。。)

Dr.William Rush Duntonが「人は水と同じように作業を希求する」と言いましたが、それに普遍性があるかを検証することなど、そういうものが「作業科学」なのではないでしょうか?



作業療法とは、作業科学で得られたそのような知見を利用して、臨床に応用するものなのだと思います。だから応用科学なんだと思います。従って、私は作業科学は解剖学や心理学や生理学や社会学等と同列だと捉えた方がすっきりすると思っています。そして、私達は作業療法士なので、他の基礎的な科学も重要だけども、何よりもprimaryとして作業のことを知る必要があるから作業科学が必要なのだと思います。筋肉や人の心の力動や社会の仕組みの知識があるだけでは臨床ではどうしようもありません。クライエントに作業療法を行う際には、その知識を応用する。つまり作業の特性を知り、クライエントの理解と介入に生かす。作業科学とはそうあるべきではないでしょうか?

以上、作業科学のことをあまり知らない私が自分の考えを述べました。が、詳しくはOS研究会で学んで下さい。